ものづくり補助金は上限4,000万円で2025年度も実施!20回公募のスケジュールは?

2025年度のものづくり補助金は上限4,000万円、収益納付なしで実施されます。本コラムでは2025年度のものづくり補助金の概要と前年度との変更点、さらには19次公募の採択率を予想しました!2025年度、ものづくり補助金の活用を検討中の方はぜひご覧ください!
梅沢 博香

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ものづくり補助金は上限4,000万円で2025年度も実施!

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

ものづくり補助金2025年度の主要な変更点

2025年度のものづくり補助金では、以下の3つの主要な変更点が発表されました。

  1. 補助率の引き上げ
  2. 補助上限額の見直し
  3. 収益納付の廃止

それぞれの変更点について詳しく解説します。

ものづくり補助金の概要はこちら!

1. 補助率の引き上げ

2025年版では、賃上げに取り組む事業者を対象に、補助率が従来の「1/2」から「2/3」に引き上げられました。
対象となる条件地域別最低賃金より+50円以上の賃金で雇用している従業員が、全体の30%以上
この条件を満たすことで、同じ経費でも受け取れる補助金額が大幅にアップします。

2. 補助上限額の見直し

従業員の人数に応じて、補助金の上限額が変更されました。
さらに、上記の賃上げ要件を満たす場合には「賃上げ特例」としてさらに高い上限額が適用されます。

従業員数通常上限額賃上げ特例適用時
5人以下750万円850万円
6~20人1,000万円1,250万円
21~50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円

特に中堅規模の企業にとって、大きな後押しとなる改定です。

3. 収益納付の廃止

2025年の公募要領では、補助金活用後に収益が発生しても、国への返還義務(収益納付)がないことが明確に示されました。

収益納付とは?

これまで、補助金を活用して事業化し、収益が生じた場合、補助金交付額を上限にその収益の一部または全部を国庫に返納する義務がありました。
この仕組みは、補助金が適切に活用されることを目的として設けられていましたが、事業者の負担が大きいという声も多くありました。今回の変更により、補助金の使い勝手が向上し、より自由な事業展開が可能になります。

2025年度版「事業再構築補助金」の収益納付とは?

方針転換の背景

中小企業庁は、こうしたルールの見直しについて以下のように説明しています:
「中小企業の成長を加速させる観点から、財務当局と調整し、収益納付を求めないこととしました」
この変更により、補助金で得た収益をそのまま事業拡大に再投資できる環境が整いました。

まとめ:2025年は「攻めの補助金活用」がしやすくなる!

  • 賃上げに取り組む企業は補助率がアップ
  • 従業員数による補助上限額の拡大
  • 収益納付の廃止で、利益を事業に還元しやすく

これらの変更は、「申請してもリスクがあるかも」とためらっていた企業にとっても大きな追い風です。
2025年は“制度を正しく理解して、最大限活用する”ことが、成長のカギとなるでしょう。

20回公募ものづくり補助金のスケジュール

項目日程備考
公募開始日2025年4月25日(金)全国中小企業団体中央会より公募開始【出典:公募要領 p.2】
申請受付開始日2025年7月1日(火)予定Jグランツを通じた電子申請開始(予定)
申請締切日2025年7月25日(金)17:00締切厳守(Jグランツ受付終了)
採択結果発表日2025年10月下旬(予定)全国中小企業団体中央会ホームページで公表予定

2025年度ものづくり補助金の公募スケジュール

これまでの公募間隔や傾向をもとに、2025年度に実施される可能性がある第21回以降のスケジュールを予測しました。

年度公募回公募締切(予想)採択発表(予想)
2025年度第20回2025年7月25日(確定)2025年10月下旬(確定)
2025年度第21回2025年10月上旬~中旬2025年12月中旬
2025年度第22回2026年1月上旬2026年3月中旬
2025年度第23回2026年3月下旬2026年5月下旬

2025年度のものづくり補助金の概要

ものづくり補助金は、「革新的なアイデア」や「効率化」を実現する設備やシステムへの投資をサポートする制度です。

基本要件

次の要件すべてを満たす「3~5年の事業計画書」を作成し、実行する必要があります。

  1. 付加価値額の成長
  2. 給与の成長
  3. 最低賃金の水準
  4. 従業員21人以上の事業者向け要件

1.付加価値額の成長

年間の付加価値額が平均で3%以上増加すること

「付加価値額」とは、簡単に言うと、会社が生み出した「新しい価値」のことです。
具体的には、売上から外部に支払った費用(材料費や外注費など)を引いたものを指します。
会社が生み出した「新しい価値」には、次のようなものが含まれます。

  • 利益(会社が稼いだお金)
  • 従業員の給料
  • 会社が払う税金

つまり、付加価値額が大きいほど、会社は「利益を出し」、従業員に「たくさんの給料を払える」ということになります。

ものづくり補助金の個人事業主の採択事例や活用方法は?

2.給与の成長

1人あたりの給与の年平均成長率が次のどちらかを満たすこと

  • 事業を行う都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率と同等以上
  • または、給与支給総額が年平均で2%以上増加すること

3.最低賃金の水準

事業を行う都道府県の最低賃金より30円以上高い賃金を支払うこと。

4.従業員21人以上の事業者向け要件

次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を公表すること。
「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」とは、企業が従業員の子育てをサポートするための具体的な計画のことです。例えば、「男性従業員の育児休業取得率を30%以上にする」などの目標があります。

「最低賃金引上げ特例」の適用を受ける事業者は、1、2、4の要件のみで構いません。
参考:令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要

申請枠

ものづくり補助金の申請枠は、以下2枠です。

  • 製品・サービス高付加価値化枠
  • グローバル枠
製品・サービス高付加価値化枠グローバル枠
要件革新的な新製品・新サービスの開発による高付加価値化海外事業の実施による国内の生産性向上
活用事例最新複合加工機を導入し、これまではできなかった精密加工が可能になり、より付加価値の高い新製品を開発海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し新 製品の開発を行うとともに、海外展示会に出展
補助上限750万円~2,500万円3,000万円
補助率中小企業1/2
小規模・再生2/3
中小企業1/2
小規模2/3
補助対象経費機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、 クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
<グローバル枠のみ>海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費
その他収益納付は求めません。

※大幅な賃上げに取り組む事業者には、補助上限額を100~1,000万円上乗せします。
また、最低賃金の引き上げに取り組む事業者には、補助率を2/3に引き上げます。

申請手続の流れ

ものづくり補助金の流れ1.補助金の対象になるか確認

まずは、「公募要領」というガイドを読んで、自分が対象かどうか、申請に必要な条件、使える経費、そして申請のスケジュールをチェックしましょう。

2.GビズIDを取得して申請を準備

補助金の申請には、「GビズID」というアカウントが必要です。これを使って電子申請を行います。
※GビズIDの取得には時間がかかることがあるので、早めの手続きをおすすめします!

3.補助金の交付が決定したら事業をスタート

交付候補者に選ばれた後、正式な交付申請と決定を経て、事業を開始します。

4.決められた期間内に事業を進め、報告書を提出

補助事業の期間内に設備投資などを完了し、「実績報告書」を提出します。

5.事業計画に基づいて進行し、定期的に状況を報告

3~5年の事業計画をもとに事業を進め、毎年「事業化状況報告」を提出します。
※事業の成果が計画に達しない場合、補助金を返還する必要があることもありますので注意しましょう。

対象経費

全枠・類型共通グローバル枠のみ
機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用料、原材料費海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も利用可能

採択率

ものづくり補助金の採択率は枠によって異なります。
18次までの全体の平均採択率は約50%です。
以下、採択率の推移になります。

19次公募ものづくり補助金の採択率を予想してみた!

第19次公募の採択率は30%台前半から40%台前半になると予想されます。
その理由は、以下3点から説明できます。

  1. 過去の採択率から見る傾向
  2. 採択基準の厳格化と制度の複雑化
  3. 予算上の制約と申請数の増加予測

1.過去の採択率から見る傾向

過去の「ものづくり補助金」の採択率は次第に低下傾向にあります。特に直近3回の結果を見ると、

公募回採択率
第16次約49%
第17次約29%(事業再構築型のみ)
第18次約36%

第18次では応募件数が大幅に増加したにもかかわらず、採択件数は限定的だったため、全体の採択率は大きく下がりました。
この流れを踏まえると、第19次でも同様の傾向が続くと見られます。

2.採択基準の厳格化と制度の複雑化

第19次からは、「付加価値額」や「給与支給総額」などの数値目標を事業者自身が設定し、それに対する達成可能性も審査対象となります。
これにより、以下のような影響が想定されます。

  • 曖昧な事業計画では通りにくくなる
  • 計画数値に根拠がないと減点される
  • 審査の実質的ハードルが上がる

制度の複雑化により、しっかり準備していない事業者の脱落が増えると考えられます。

3.予算上の制約と申請数の増加予測

ものづくり補助金は令和5年度補正予算を活用して実施されますが、

  • 補助金単価は高額(最大で2,000万円)
  • 補助上限引き上げや支援対象の拡大

といった影響で、1件あたりの補助金額が増える=採択件数が抑えられる可能性があります。
また、制度変更による「駆け込み申請」も増えると予測されるため、申請者数に対して予算が追いつかず、採択率が低下する懸念があります。

2025年度、今後のものづくり補助金の採択率はどうなる?

今後の「ものづくり補助金」の採択率は、30%前後で推移しつつ、回によっては20%台に突入する可能性もあると予想されます。
今後の採択率が低下傾向になると考えられる理由は以下の通りです。

  1. 採択基準の厳格化と可視化
  2. 予算の制約と採択件数の抑制
  3. 申請件数の増加と“見直し申請”の増加

1.採択基準の厳格化と可視化

第19次公募からは、

  • 付加価値額・給与総額の目標数値の設定
  • 数値目標に対する達成可能性も審査対象

という新しい審査基準が加わりました。
今後も事業の実現性・数値根拠の妥当性が強く求められる方向に進むと見られ、しっかりとした計画がない事業者は通過しにくくなるでしょう。
結論として、採択率は30%前後で推移しつつ、今後は20%台に突入する可能性があります。

直近今後
第18次:35.8%30%前後 ➤ 厳格化により20%台に落ち込む回もある可能性

採択されるには、「加点項目の確保」「明確な数値目標」「根拠ある収支計画」が不可欠です。

2.予算の制約と採択件数の抑制

令和5年度補正予算をもとに実施されている「ものづくり補助金」ですが、近年の補助額は

  • 通常枠で最大1,250万円
  • グリーン・グローバル枠などで最大2,000万円以上

高額化が進んでいますそのため、限られた予算内での採択件数は絞られる傾向にあり、結果として採択率は低くなりがちです。

3.申請件数の増加と“見直し申請”の増加

近年、以下のような影響で申請者が増加傾向にあります。

  • コロナ特需が落ち着き、次の成長戦略を模索する中小企業が増えている
  • 事業再構築補助金からの切り替え組が申請している
  • 補助金支援業者の増加により、「とりあえず申請」も増えている

こうした背景により、競争倍率は今後も高止まりする可能性が高いです。

2025年、ものづくり補助金の採択に向けたポイント

ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上を支援する重要な制度であり、毎回多くの応募がある人気の補助制度です。
採択されるには、公募要領に沿った内容で、審査項目を的確に押さえた事業計画の提出が求められます。
ここでは、採択に近づくために押さえておきたい事業計画書のポイントと、注意すべき落とし穴を解説します。
以下、採択されやすい事業計画書のポイント4点です。

  1. 計画の実現可能性が高いこと
  2. 付加価値や賃金の成長が明確であること
  3. 課題の把握とその解決策が妥当であること
  4. 国の政策との整合性や社会的な意義があること

1. 計画の実現可能性が高いこと

スケジュールや体制が現実的であり、計画通りに実施可能であると判断される必要があります。
「誰が・いつ・どのように」実行するのかが明確になっており、必要な人員やスキルを確保している体制であるかが評価されます。
導入後の活用方法も含め、全体として無理のない計画になっているかが問われます。

2. 付加価値や賃金の成長が明確であること

補助金の審査では、「売上」や「利益率」ではなく、付加価値額の成長率(営業利益+人件費+減価償却費)や、給与支給総額の増加などが重視されます。
計画終了後3~5年の間に、これらの数値が規定された成長率を達成できるかどうかを示すことが求められます(例:付加価値額は年平均3%以上、給与は年平均2%以上の成長など)。

3. 課題の把握とその解決策が妥当であること

最も基本となるのは、自社の現状の課題を客観的かつ具体的に整理し、その解決策として提案する設備投資等の内容が妥当であることです。
例えば「人手不足で生産が滞っている」「手作業によるミスが多発している」など、明確な課題を示し、それに対して「自動化設備の導入によって作業効率を向上させる」など、具体的な改善策と期待効果を論理的に説明することが重要です。

4. 国の政策との整合性や社会的な意義があること

「地域の雇用維持」「CO₂削減」「デジタル化による業務改善」など、国の政策と整合性があるテーマは政策加点の対象となる可能性があります。
単に社会的意義を述べるだけでなく、それが具体的に国の重点政策とどのように関係するかを明示することがポイントです。

不採択になりがちな注意点

  • 機械導入が単なる更新目的にとどまるなど、革新性が乏しいと判断されると対象外となる場合があります。
  • 計画の根拠が不明確であったり、同業他社との差別化が不十分な場合、実現性・有効性が低いと判断されます。
  • 他の補助金制度との重複申請や経費の二重計上があると、採択取消や返還の対象になります。
  • 虚偽記載や事業主体性の欠如(他者による代理申請など)も厳しくチェックされます。

ものづくり補助金の不採択理由と対策

ものづくり補助金は、中小企業の成長を後押しする貴重な制度ですが、申請すれば必ず通るものではありません。
採択率は回によって異なるものの、一定数の申請は審査対象外または不採択となっています。
不採択の要因には、制度要件を満たさない形式不備から、事業の革新性や実現性が審査基準に届かないケースまで、さまざまなパターンがあります。
ここでは、よく見られる不採択理由とその対策を解説します。

  1. 補助対象外の経費を含めている
  2. 要件を満たしていない(形式面の不備)
  3. 数値根拠が不十分で説得力に欠ける
  4. 事業の革新性・差別性が伝わっていない

1. 補助対象外の経費を含めている

補助金で認められる経費には明確なルールがあり、該当しない費用を含めると審査対象外または不採択となります。
たとえば以下は補助対象外です。

  • 補助事業開始前に契約・発注・納品された設備やサービス
  • 汎用的な業務用PC・スマートフォン・デジカメなどの機器
  • 車両、事務用品、広告宣伝費(※グローバル枠を除く)
  • 交際費、借入金の返済、土地・建物の取得費

【対策】
公募要領の「補助対象経費一覧」「対象外経費一覧」を必ず事前に確認し、該当の有無を丁寧にチェックしましょう。
判断に迷う場合は、事務局や認定支援機関への相談が有効です。

2. 要件を満たしていない(形式面の不備)

gBizIDプライム未取得や添付資料の漏れ、電子申請システムでの操作ミスなど、形式的な要件を欠くだけで審査対象外になることがあります。
よくある不備:

  • gBizIDプライムアカウント未取得
  • 賃上げ表明書・最低賃金表明書の未添付
  • 財務諸表(3期分)の提出漏れ
  • 申請者情報と証明書類(登記簿等)の不一致

【対策】
提出前に申請マニュアル・チェックリストを確認し、提出書類と要件を網羅的に確認しましょう。
初めて申請する事業者は、1か月以上の準備期間を確保するのが望ましいです。

3. 数値根拠が不十分で説得力に欠ける

成果として「売上〇%増」などが書かれていても、根拠が曖昧だと評価されません。
補助金では、売上ではなく「付加価値額」や「給与支給総額」の増加率が評価指標です。
【対策】
以下のような定量的な裏付けを提示しましょう。

  • 過去3年分の営業利益・人件費・減価償却費に基づく付加価値額のCAGR見通し
  • 業界平均や市場成長率、受注予定の商談等を使った売上の試算
  • 労働時間削減による生産性の向上数値(例:作業時間30%削減)

審査では「補助金終了後3~5年間で付加価値額を年平均3%以上」「給与支給総額を年平均2%以上」増加させる計画が求められます。

4. 事業の革新性・差別性が伝わっていない

単に「業務効率化を図る」「生産性を上げたい」といった一般的な目的だけでは、補助金の主旨である革新的な新製品・サービスの開発には該当しない可能性があります。
【対策】
以下のような要素を具体的に記載しましょう。

  • 自社の独自技術を活かした開発内容
  • 同業他社と比較した差別化ポイント(品質・スピード・コスト等)
  • 地域の課題やニッチ市場に特化した強み
  • これまでにない製品構成やビジネスモデルの転換

特に、同業内で普及している技術を用いた改善(例:一般的な自動化設備の導入)は「革新性なし」と判断される可能性があります。

採択に向けた本質的なポイント

補助金の審査では、次のような視点で事業計画がチェックされます。

  • この投資がなぜ必要なのか?(課題と解決策)
  • どう実現されるのか?(体制・スケジュール・仕組み)
  • どんな成果があるのか?(定量的な成長計画)
  • 政策との整合性があるか?(地域雇用・GX・DX等)

わずかな不備でも不採択の原因になります。
不明点や不安点がある場合は、認定支援機関や公的支援機関のサポートを活用しながら、要領に適合した計画書を作成しましょう。

ものづくり補助金には採択を左右する「加点・減点項目」がある!

ものづくり補助金では、事業計画の内容そのものだけでなく、「加点・減点項目」と呼ばれる評価基準も審査に大きく影響します。
はじめて申請する方にとっては聞き慣れない言葉かもしれませんが、これを知っているかどうかで、採択の可能性が大きく変わることもあるのです。

加点:申請者が国の重点政策や条件に合致している場合、「この事業者は優先的に支援したい」と評価され、審査でプラス評価(加点)が与えられます。
減点:反対に、制度上のルールに違反していたり、不適切な申請があった場合、審査でマイナス評価(減点)となり、場合によっては不採択になることもあります。


この加点・減点項目は、申請書の中でのアピールや注意点として非常に重要です。
とくに補助金申請が初めての方は、「内容が良ければ通る」と思いがちですが、こうした評価要素の存在を知らずに不利な状況に陥ってしまうケースも少なくありません。

加点対象となる項目

審査時に「加点」として評価される要素が複数設定されています。下記に該当する場合は、事業計画書に必ず明記し、必要な証明書類の添付も忘れずに行いましょう。

加点項目内容
経営革新計画の承認「経営革新等支援機関」による承認を受けた事業計画であること。都道府県による認定書の写しが必要です。
地域未来牽引企業経済産業省が選定した「地域未来牽引企業」に該当する企業は加点対象となります。
再生事業者再生支援協議会の支援を受けている、または一定の要件を満たす「再生計画」実行中の事業者は加点されます。
賃上げ目標の上乗せ通常の賃上げ要件よりもさらに高い成長率を設定することで、補助上限額の特例加算だけでなく加点評価にもつながります。

※加点を狙う場合、要件を満たすだけでなく、証拠書類の提出と計画書内での明記が必須です。

減点・不採択の可能性があるケース

一方で、制度のルールに反した申請や重複申請は、減点あるいは審査対象外(=不採択)となることがあります。特に以下のケースは注意が必要です。

減点・不採択の原因内容
同一・類似内容で他の補助金と重複して申請IT導入補助金や省力化補助金など、中小企業庁所管の他制度と同一の経費を含む申請は不可。
(例:同一の機械導入を複数制度で補助申請)
類似事業の再申請(流用)他社・他者の申請書の一部を流用したと疑われる場合、最大4回の申請不可ペナルティが科されることも。
同一法人で複数申請親子会社・グループ会社を含め1法人につき1件まで。みなし同一法人にも注意が必要です。
虚偽記載・不誠実な申請内容に不正がある、意図的に事実を隠した等の申請は、次回以降の申請が禁止される可能性があります。

採択を狙うなら

採択を目指すうえでは、加点項目の活用と同じくらい、「減点されない」ことも重要です。
特に他の補助金を同時に検討している場合は、経費内容の整理と申請戦略の立案が必須となります。
加点・減点の要素は見落としがちな落とし穴でもあります。
必要に応じて専門家の確認を受けながら、計画的な準備を進めましょう。

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ものづくり補助金は他の補助金と併用できる?

「他の補助金と同じ設備や費用で申請できるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
ここでは、「ものづくり補助金」と他の補助金との併用可否や注意点について、第20次公募要領の記載に基づいて解説します。

原則:補助対象経費の重複は不可

公募要領には、次のように明記されています。

「中小企業庁が所管する補助金(中小企業生産性革命推進事業、事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助金等)と同一の補助対象経費を含む事業は、補助対象外とします。」
引用:第20次公募要領 p.8

つまり、同一の設備や支出項目で複数の補助金を申請することは認められていません
また、仮に設備の内容が異なるように見えても、申請内容に重複性があると判断されれば、不採択の対象となる可能性があります。

重複申請が認定された場合のリスク

  • 審査中に判明:不採択処分
  • 採択後に発覚:交付決定の取消し、および補助金の返還命令
  • 悪質な場合(故意または重過失):次回以降の公募において、最長4回分の応募制限が課される場合があります
引用:第20次公募要領 p.48「5-⑧ 応募要件等の不備」

併用が可能なケース(内容・経費が明確に区分されている場合)

補助金の併用自体が一律に禁止されているわけではありません。
補助対象経費や事業目的が明確に区分されていれば、別制度の補助金と併用することは可能です。

併用可能な具体例

  • ものづくり補助金で生産設備を導入し、IT導入補助金で業務管理クラウドツールを導入
  • → 設備とソフトウェアで経費区分が明確に異なる
  • ものづくり補助金で工場の機械導入を行い、地方自治体の補助金で建屋改修を行う
  • → 補助金ごとに目的・対象経費が明確に分かれている

併用時の注意点

経費と目的の明確な切り分け各補助金の補助対象経費を表形式などで整理し、「重複がない」ことを明示することが望ましいです。
スケジュール管理補助事業の実施期間が重複する場合、それぞれの事業内容に整合性が取れていることが重要です。
申請書への記載申請時には、併用する補助金の名称、内容、対象経費、実施期間を正確に記載する必要があります。虚偽や不記載があると、交付決定取消の対象となることがあります(公募要領 p.48)。

制度横断での補助金活用を成功させるためのポイント

制度の併用を検討する際には、以下の対応を推奨します。

  • 各補助制度の公募要領を照らし合わせ、重複を避けた計画を立案
  • 認定経営革新等支援機関や地域の支援機関(よろず支援拠点等)に早期相談する
  • 申請書内で「補助金名」「補助対象経費」「目的の違い」を具体的に説明し、透明性を確保する

明確な区分と誠実な記載があれば、複数の補助金を戦略的に活用することは可能です。
制度ごとの目的とルールを丁寧に整理し、適正な申請を心がけましょう。

活用事例紹介

製品・サービス高付加価値化枠の事例

業種:金属加工業
課題:従来設備では高精度加工が困難で、外注費増・納期遅延が発生
取り組み:高精度複合加工機の導入
導入効果

  • 精度の高い部品を内製化できるようになり、外注コストを30%以上削減
  • 納期短縮と品質向上により、医療機器・精密機器分野へ参入
  • 国際展示会への出展を通じて、海外取引先を獲得し新規輸出を開始
※医療機器など法規制のある分野では、承認に要する期間との整合性(補助事業期間12か月以内)に注意が必要です。

グローバル枠の事例

業種:精密機械メーカー
課題:海外向け製品に対応する設備が不足し、海外販路開拓が進まない
取り組み:海外規格対応の新設備導入+展示会出展
導入効果

  • 海外市場向け製品ラインを確立し、OEM契約を受注
  • 海外展示会で新ブランドを発表し、販路を3か国へ拡大
  • 海外バイヤーとの初取引を実現し、初年度で輸出比率が15%に上昇
※展示会出展費、翻訳費、海外旅費などは「グローバル枠」の輸出型事業において補助対象経費となります。

ポイント整理

  • 事業内容と経費の線引きを明確にし、申請書で丁寧に説明することが鍵
  • 併用を前提とした戦略的な申請には、専門家や公的支援機関との連携が不可欠
  • 他の補助金との併用は可能だが、補助対象経費が重複すると不採択や返還のリスクあり

補助金制度を横断的に活用することで、資金調達の選択肢が広がり、事業拡大のスピードを加速させることができます。的確な設計と説明で、リスクなく最大限に制度を活用しましょう。

ものづくり補助金のよくある質問

Q. 同じ年度内に2回申請することはできますか?

A:同一の締切回に複数の申請をすることはできません。
公募要領では、「みなし同一事業者による複数申請はすべて無効とする」と定められています。

ただし、年度をまたがる複数回の申請自体が明確に禁止されているわけではありません。
一度採択された事業と内容が重複していないこと、交付決定を受けていないことなどの条件を満たす必要があります。
※採択済み事業がある場合、交付手続き中に次の申請を行うことは原則として避けるべきです。

Q. ものづくり補助金の採択率はどのくらいですか?

A:回によって異なりますが、30~40%程度が目安です。
過去の実績では、第16次締切の採択率は48.8%と高水準でした。一方で、30%台にとどまる回もあり、申請件数や予算枠によって変動します。
不採択となった場合でも、内容を見直せば次回以降に再チャレンジすることが可能です。

Q. 2025年は「第19次公募」のみで終わりですか?

A:いいえ、2025年4月25日から第20次公募がすでに開始されています。
2025年2月時点では第19次が最新でしたが、第20次の公募が正式に発表・開始されています(2025年4月25日〜)。
今後も予算の状況に応じて、新たな公募が追加される可能性がありますので、随時最新情報をご確認ください。
第20次の公募の情報をチェックする!

Q. 20次ものづくり補助金のスケジュール予想は?

A:以下が公式スケジュールです。
公募開始:2025年4月25日(金)
電子申請受付開始:2025年7月1日(火)予定
応募締切:2025年7月25日(金)17:00
採択結果発表:2025年10月下旬予定

Q. 個人事業主もものづくり補助金を活用できますか?

A:はい、条件を満たせば個人事業主も申請可能です。
「法人格の有無を問わず」中小企業・小規模事業者に該当する個人事業主であれば対象になります。
対象となる小規模事業者の定義(常時使用する従業員数)は以下の通りです。

業種分類従業員上限
製造業、建設業、運輸業など20人以下
卸売業・小売業・サービス業5人以下

参考:ものづくり補助金公式サイトのスケジュール
ものづくり補助金の公式サイト

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監修者からのワンポイントアドバイス

ものづくり補助金の公募のスケジュールが公表されました。申請開始から締め切りまで2週間ほどしかありませんので申請をご希望される方は入念に準備を行って申請するようにしましょう。収益納付を求められなくなりましたので申請もしやすくなっています。