新事業進出補助金の要件とは?流れや開始時期も解説

新事業進出補助金は、主に中小企業が利用できる補助金制度です。 ただ、中小企業だからといって、必ずしも新事業進出補助金に申請できるとは限りません。 要件があるので確認しておきましょう。
井上 雅也

更新日:

新事業進出補助金 要件

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金交付にかかる具体的な要件とは?

新事業進出補助金は誰もがもらえる自由な補助金制度ではなく、要件がいくつかあります。

  1. 新事業進出要件
  2. 付加価値額要件
  3. 賃上げ要件
  4. 事業場内最賃水準要件
  5. ワークライフバランス要件
  6. 金融機関要件
  7. 賃上げ特例要件 (賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件)

1.新事業進出要件

新事業進出補助金では、下記の新事業進出要件を満たす必要があります。

  • 製品等の新規性:申請企業にとって新しい製品やサービスであること
  • 市場の新規性:新製品やサービスが、既存事業とは異なる新たな市場や顧客層を対象とすること
  • 新市場売上高要件:事業計画期間の最終年における新事業の売上高が、申請時の総売上高の10%または総付加価値額の15%を占めること

ただし、既存の製品の生産量を上げる場合や、既存製品の一部を再利用して製造する場合、既存製品に類似した製品の生産は対象に含まれません。
さらに、同じジャンルの製品を新たに製造し、従来の製品で代替が効くものも対象外となるので注意しましょう。

2.付加価値額要件

事業を進めることで、企業の価値が年々増えていくことが期待されなければなりません。
企業が新しい事業を始めると、その結果として価値が増えるでしょう。
補助金事業終了後3年〜5年の事業計画期間において、付加価値の割合が年平均で4.0%以上でなければなりません。

3.賃上げ要件

給与の支払いが増えることは、企業の成長を示しています。
この成長が、事業を行っている地域での最低賃金の過去5年間の平均成長率以上であるか、もしくはその成長率に2.5%以上を上回ることが求められます。
つまり、従業員に支払う給与が増えることで企業の成長が評価されるわけです。

4.事業場内最賃水準要件

従業員に支払う最低賃金が、事業を行っている地域の最低賃金よりも30円以上高い必要があります。
これは、企業が従業員に対して十分な給与を支払っているかを確認するための基準です。

5.ワークライフバランス要件

ワークライフバランス要件では、次世代育成支援対策推進法に基づく、一般事業主行動計画の公表します。
この要件は、応募申請前に、「両立支援のひろば」に策定した一般事業主行動計画を公表する必要があるのです。
行動計画は、計画の策定から公表まで、システム上の反映に1〜2週間を要するため注意しましょう。

6.金融機関要件

金融機関要件とは、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受けていることが条件となります。
金融機関等から資金提供を受ける場合は、「金融機関による確認書」を提出を忘れずにしましょう。

7.賃上げ特例要件 (賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件)

賃上げ特例要件では、下記の条件をすべて満たす必要があります。

  • 補助事業実施期間に、給与支給総額を年平均+6.0%以上にする
  • 補助事業実施期間に、事業場内最低賃金を年額+50円以上にする

また、上記のいずれか一方でも条件を達成できなかったとき、賃上げ特例の適用による補助上限額引き上げ分を全額返還することになってしまうのです。
詳細は新事業進出補助金の公募要領を確認してください。
参考:新事業進出補助金(公募要領)
参考:中小機構(新事業進出補助金)

新事業進出補助金について

新事業進出補助金 要件
ここでは、新事業進出補助金について解説します。
新事業進出補助金は、企業が新しい製品やサービスを通じて新たな市場に挑戦する際に支援を受けられる制度で、予算は1,500億円となっています。
企業の成長や発展を目的としており、補助金を受けるには。新規事業への挑戦や将来の成長見込み、人材育成、地域社会への貢献などが必要です。
補助金交付後も一定の基準を満たす必要があり、特に中小企業にとって資金面での後押しとなるでしょう。
新たな事業を考えている企業には、活用しやすい注目の補助金といえます。

新事業進出補助金の対象経費は?

新事業進出補助金を使って企業は新たなことに挑戦できるわけですが、具体的にどのような経費であれば補助対象になるのでしょうか。
最も注目されているのは建物費です。
企業が新しい事業を始めるために、事務所や工場などの建物を建てたり、改修したりするための費用が補助されます。
ただし、土地を購入するための費用は対象外になる可能性があるので気を付けましょう。
次に、機械装置やシステム構築費です。
新しい事業を進めるために必要な機械や工具、ソフトウェア、システムなどを購入するための費用を補助してもらえます。
これにより、企業が新しい事業を円滑に進めるための設備を整えることが可能です。
また、技術導入費も補助対象となります。
これは、新しい事業を進めるために必要な知的財産権や技術を導入するための費用です。
他社から技術を導入するための契約費用なども含まれます。
専門家経費は、企業が新しい事業を進めるために専門家に依頼するための費用です。
たとえば、大学教授や公認会計士などにアドバイスをもらうための費用が対象となるでしょう。
さらに、運搬費やクラウドサービス利用費なども新事業進出補助金の対象になる可能性があります。
こうした費用は、企業が新しい事業を進めるために必要になるからです。
最後に、広告宣伝や販売促進費も補助対象です。
新しい製品やサービスを多くの人に知ってもらうために、宣伝活動が必要な場合もあります。
その時にかかる広告費や宣伝費用は、新事業進出補助金の補助対象です。
参考:新事業進出補助金PDF
新事業進出補助金 要件

新事業進出補助金はいつから始まる?

新事業進出補助金を申請したくても、いつからスタートするのか公募時期がわからなければ、申請できないですよね。
2025年の新事業進出補助金についてですが、4月22日より第1回公募が開始されています。
また、補助金の申請受付開始日が2025年6月ごろの予定で、申請締切日は2025年7月10日の18時までです。
申請を検討されている方は、スケジュールに配慮しながら申請の準備を進めるようにしましょう。
参考:新事業進出補助金(スケジュール)

新事業進出補助金の手続きの流れは?

補助金の申請には、いくつかのステップを踏む必要があるため、説明していきます。

  1. GビズIDプライムアカウントの取得しておく
  2. 公募開始
  3. 交付候補者決定(採択)
  4. 交付申請・交付決定
  5. 確定検査を受ける
  6. 新事業進出補助金の請求
  7. 事業化状況報告、知的財産等報告

GビズIDプライムアカウントの取得しておく

新事業進出補助金を申請するためには、GビズIDプライムアカウントが必須です。
これは、インターネットを使って申請するためのアカウントです。
そもそも新事業進出補助金は、オンライン申請しか受け付けていません。郵送や持ち込みでは受け付けてくれません。
オンラインで申請するためにも専用のアカウントが必要です。
アカウントを取得すれば、申請に必要な情報を入力し、書類を提出できます。
アカウント取得には2週間かかる場合もあるため、できれば公募がスタートする前に済ませておきましょう。

公募開始

公募が開始されたら、実際に申し込めるタイミングです。
公募後、企業は新事業進出補助金を受けるために必要な書類や計画書を準備し、提出します。

交付候補者決定(採択)

申請した内容が審査され、新事業進出補助金を受けることが決まる段階です。
審査員は提出された申請内容をしっかりと確認し、新事業進出補助金を支給するかどうかを決めます。採択されれば通知が来ます。

交付申請・交付決定

新事業進出補助金が採択されたら、補助金を実際に受け取るために必要な書類を提出します。
この手続きが完了して初めて、新事業進出補助金が支給されることが確定します。
逆にいえば、交付申請をしなければ、いくら採択されたとしても新事業進出補助金が交付されることが確定しません。
せっかくのチャンスを台無しにしてしまうので、採択されたら速やかに交付申請を行いましょう。

確定検査を受ける

新事業進出補助金の交付決定がされたら、実際に新しい事業に取り組みます。補助金の交付前に新事業に取り組む必要があるのです。
その新事業を進めていく中で、計画通り事業が進んでいるか確認するための検査が実施されます。
この検査が終われば、最終的に新事業進出補助金が支給されるという流れです。

新事業進出補助金の請求

新事業進出補助金を支給してもらうには必要書類を提出し、請求する必要があります。
この請求が承認されれば、新事業進出補助金が振り込まれるでしょう。

事業化状況報告、知的財産等報告

新事業進出補助金が実際に振り込まれたからといって、安心するのはまだ早いです。まだやるべきことがあります。
新事業進出補助金を受給した後も、実際に事業が順調に進んでいるかどうか報告する義務があるからです。
これは、事業が成功しているかを確認するために必要なプロセスです。
参考:新事業進出補助金PDF

新事業進出補助金を受けるためのポイント

新事業進出補助金を受けるためには、下記のポイントを押さえておきましょう。

  • 専門家を活用する
  • 事業計画を練っておく
  • 事業化状況報告を毎年提出する
  • 他の補助金や税制優遇制度も調べておく
  • 審査員が納得してくれる事業計画書を作る
  • 申請から受給までのスケジュールに注意する

専門家を活用する

補助金の申請手続きは、初めて行う企業にとっては難しい可能性があります。
ですから、補助金申請をサポートしている専門家に頼むのも一つの選択肢です。
実際、多くの事業者が外部の専門家に依頼して申請の準備をしています。
自力でしてもいいのですが、採択率を上げるためにもプロに依頼したほうがいいでしょう。
そうすることで、良質な申請書類ができあがります。
また、専門家は申請書の作成から申請後の手続きまでサポートしてくれるため、自分一人で行うより大幅に手間暇が削減できます。
外部の専門家がどのようなサポートをしてくれるかは、以下の通りです。

  • 資金調達についての相談
  • 採択後の手続きのサポート
  • 申請書の作成や提出のサポート

専門家を活用すれば手続きは円滑に進み、事業計画を実行に移すことができます。

事業計画を練っておく

新事業進出補助金を受けるためには、どのように事業を進めるかの計画書が必須です。
この計画書では、どのような新しい商品やサービスを作るのか、それがどれだけ成長するかを説明しなければなりません。説得力も必要です。
入念な計画書を作成するのには、労力や時間が必要なので、早めに準備しておきましょう。

事業化状況報告を毎年提出する

新事業進出補助金を受けた後も、毎年事業が順調に進んでいるかを報告しなければなりません。
この報告をすることで、補助金が適切に使われていることを確認してもらえます。
もし適切に行わなかった場合、新事業進出補助金を返金する必要が出てくる場合もあるため、怠らないようにしましょう。

他の補助金や税制優遇制度も調べておく

新事業進出補助金だけでなく、他の補助金や税制優遇制度も活用できる可能性があります。
活用可能な制度をうまく組み合わせれば、より効果的に事業を進めることができるでしょう。

審査員が納得してくれる事業計画書を作る

新事業進出補助金の申請においては、とにかく事業計画書が大切です。
事業計画書の内容が、採択されるかされないかの運命の分かれ道。
審査員は専門家ではないため、専門用語の多用はおすすめできません。
専門知識がない方でも理解しやすいように、わかりやすい言葉で書きましょう。
また、説得力を増すために、具体的な数字を使って裏付けることも重要です。
審査の通過率を高める書き方にはコツがあるので、新事業進出補助金に慣れている専門家に依頼するのもおすすめです。

申請から受給までのスケジュールに注意する

新事業進出補助金は、申請から受け取るまでに時間がかかります。
特に注意するべきは、申請期限と補助金の受け取りまでのスケジュールです。
申請期限を過ぎてしまうと、新事業進出補助金を受け取ることができなくなるでしょう。
基本的なことですが、必ず申請スケジュールを意識しておいてください。

まとめ

新事業進出補助金の要件について解説しました。
新事業進出補助金は、中小企業が新しい事業を始めるための支援をするために提供される補助金です。
この補助金を使って、企業は新しい商品やサービスを作ったり、新しい市場に進出したりできるのです。
新事業進出補助金を受けるためには

  • 新しいアイディア
  • 新しい市場への進出
  • 企業の成長率を確保する計画

など、いくつかの要件を満たす必要があります。
さらに、事業終了後も一定の条件をクリアし続ける必要があるのです。
申請から補助金の給付までに工数がかかりますが、中小企業にとっては、資金面でのサポートが大きな助けとなり、事業の拡大に向けた強力な後押しとなるはずです。

関連コラム一覧

2025年新事業進出補助金はいつから?
事業再構築補助金は2025年も実施される?後継補助金は?
中小企業成長加速化補助金とは?採択されるため申請準備を解説!
人物

監修者からのワンポイントアドバイス

新事業進出補助金は新規事業を開始する際に検討したい補助金となっています。 建物費などの費用を計上でき、新規事業の円滑なスタートに貢献できる補助金です。 申請のためにクリアすべき要件がありますので専門家とよく吟味して申請を行うようにしましょう。