新事業進出補助金の加点項目を増やすと有利?その方法とは?

新事業進出補助金の採択率を上げるには、加点項目を増やすと有利と言われています。 では、どのように加点項目を増やせばよいのでしょうか? 今回は新事業進出補助金の加点について解説します。
井上 雅也

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新事業進出補助金 加点

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金の加点項目って何のこと?

新事業進出補助金 加点
新事業進出補助金をもらうためには審査を受ける必要があります。

審査では、特定の条件を満たすと加点といって、プラスの評価をもらえるのです。

この加点が多ければ多いほどライバルと差をつけることができ、審査に受かりやすくなるでしょう。

つまり、新事業進出補助金の加点項目を増やすことが、採択率を上げることにもつながります。

ちなみに、加点が増えたからといって、補助率や補助金の上限額まで上がるわけではありません。

加点はあくまで申請内容を審査する際に有利に働くものです。

補助率や補助金の上限は申請枠ごとに決められているため、加点が多いからといって上限額は増えない点に注意しましょう。

詳細はこれから発表される予定ですが、前年度の制度に基づき、新事業進出補助金の加点項目を具体的に見ていきましょう。

  • 最低賃金を上げる
  • 国の調査に協力する
  • 給料を大幅に上げた
  • 特別な団体に入っている
  • コロナ回復加速化枠で申し込む
  • 情報セキュリティを強化している
  • 健康経営優良法人に認定されている
  • 取引先との協力関係を大切にしている
  • コロナ対応の特別なローンを使っている
  • 働きやすい環境を作る取り組みをしている
  • 成長加速マッチングサービスに登録している

最低賃金を上げる

会社の中で、最低賃金を一定額以上引き上げると加点されます。

国の調査に協力する

経済産業省が進めるEBPM(証拠に基づく政策立案)という調査事業に協力すると、加点されるでしょう。

申請の時にチェックを入れればいいだけです。
内閣府:EBPM

給料を大幅に上げた

新事業進出補助金の事業終了後、3~5年の間に社員の給料を大きく上げると加点されるでしょう。

その上げ幅が大きいほど加点が増えるのです。

特別な団体に入っている

酒造組合や内航海運組合など中小企業ではないものの、特定の事業をしている団体に加入していると加点されるでしょう。

コロナ回復加速化枠で申し込む

新事業進出補助金の中にもいくつか枠があります。

その枠の中で、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)」で申し込むと加点されるという仕組みです。

情報セキュリティを強化している

企業の大事な技術や情報を守る技術情報管理認証制度(TICS)の認証を受けていると加点されます。
経済産業省:技術情報管理認証制度

健康経営優良法人に認定されている

従業員の健康を大事にする企業として、国から健康経営優良法人に認定されていると加点されます。

取引先との協力関係を大切にしている

パートナーシップ構築宣言といって、取引先と助け合いながら成長することを約束すると、加点されます。

コロナ対応の特別なローンを使っている

コロナの影響でお金を借りた人が、特定のローンに借り換えをすると加点されます。

働きやすい環境を作る取り組みをしている

たとえば、女性がキャリアアップしやすい職場環境にしたり、育児をしながらでも働ける環境を整えたりしていると、加点されるでしょう。

成長加速マッチングサービスに登録している

中小企業向けの支援サービスである成長加速マッチングサービスに登録し、課題を提出していると加点対象です。
中小企業:成長加速マッチングサービス

新事業進出補助金の審査のポイント

新事業進出補助金 加点
新事業進出補助金に申請すると審査がスタートします。

審査時には次のようなことが入念にチェックされるため、あらかじめ確認しておきましょう。

計画通りに実行できそうか

いくら良いアイデアでも、実行できなければ意味がありません。

そのため、計画通りに実行できると考えられる事業計画しか審査に通らないでしょう。

実行できそうだと審査員に認めてもらうためにも、下記の準備が求められます。

  • 経営資源を確保する
  • しっかりした計画を立てる
  • 事業を進めるための人材を揃える
  • 銀行などから資金調達できるか示す
  • 事業の目標ややるべきことを明確にする
  • お金のやりくりもうまくできることを示す
  • 自社の財務状況が安定していることを示す
  • 事業を実行できるチームや人材を確保する
  • どのように進めるか、スケジューリングする
  • 外部のコンサル会社に頼りすぎず、自社の力で進められる

審査でしっかり説明できるか

審査の一つとして、口頭審査(インタビュー)も追加されています。口頭審査のポイントは、下記の通りです。

  • オンラインで実施される
  • 事業計画に矛盾がないようにする
  • 事業の実現可能性や新しさを説明する

これらに気を付けて回答する必要があります。

また、口頭審査におけるマイナスポイントは、以下の通りです。

  • ネット環境が悪いと審査に落ちる可能性がある
  • 他の人が映り込んだり、話し声が入らないようにする(基本的に事業者一人で対応)

事業計画をしっかり作成し、スムーズに説明できるようにしておきましょう。ネット環境を整えておくことも大事ですね。

国の支援が必要な理由はあるか

補助金をもらう事業が、日本や地域経済をよくするかどうかも審査でみられるでしょう。

たとえば、次の観点から日本の地域経済を活性化するかどうかがチェックされます。

  • 雇用を活発にできるか
  • 新しい技術を使用するか
  • 海外展開の可能性はあるか
  • 地域の特産品を活かした事業か
  • 競争力のある商品やサービスか
  • 世界に通用するビジネスになりそうか
  • 地域や日本全体の経済を活性化できるか
  • AI、IoT、デジタル技術などを取り入れているか
  • 環境に優しいエネルギーや技術を導入しているか

このように、事業がその企業にとってだけ有利になるわけでなく、社会にとってもプラスになるかどうかもみられています。

ですから、審査ではそのあたりもしっかりと強調する必要があるでしょう。

そもそも、新事業進出補助金は国が出している補助金制度です。そのため、国の支援が本当に必要な企業だけが補助金をもらえます。

本当に支援が必要な企業と認められるためには、次の条件を満たす必要があるでしょう。

  • 事業が社会に大きな影響を与え
  • 補助金を使うことで、大きな成果が見込める
  • 他の会社や地域にプラスの影響を与えられる
  • 新しい技術やサービスで社会を変える可能性がある

例を挙げるなら、AIやロボットを活用して効率を上げられるなど、投資効果が高いと審査に受かりやすくなります。

新事業が成功する見込みはあるか

審査員は、新事業が本当に成功しそうかどうかを入念にチェックします。具体的な観点は以下の通りです。

  • 市場が成長しているか
  • 会社の強みを活かせるか
  • 得意分野と関係があるか
  • これから売上が増えそうな分野か
  • 競争相手と比べて勝てる要素があるか
  • 他の会社には真似できない強みがあるか
  • 競争相手が多すぎず、勝てるチャンスがあるか
  • 価格、品質、サービスなどに、何か特別な強みはあるか
  • 最新の技術や特許など、簡単にマネできないものを持っているか?

新しい事業がこうした条件を満たしていると、高い評価を得られるでしょう。

審査の観点が多くてややこしくなりますが、こうしたポイントを押さえて事業計画をしっかり作ることが大切です。

ここで手を抜かなければ、新事業進出補助金の審査に通りやすくなるでしょう。

コロナ後の新しい時代に対応できる事業か

コロナは収束しつつありますが、それでもまだコロナショックの名残があります。

現在はアフターコロナの時代ですが、そんな時代でも柔軟に対応できる事業かも審査されるでしょう。

例)
感染対策ができているか?

国がこの事業に補助金を出す意味があると思えるように、しっかり説明してくださいね。

さらに新事業進出補助金の採択率を上げる方法

新事業進出補助金の採択率を、より高める具体策を紹介しますので、ぜひご参考にしてください。

  • 大幅な賃上げ
  • 経済産業省のEBPMに協力する
  • 事業場内最低賃金を引き上げる
  • ワークライフバランスの取り組みを行う
  • 専門家に相談して事業計画書を作成する

大幅な賃上げ

加点項目のところでも説明しましたが、大幅な賃上げをすると採択率が上がります。

特に成長分野に進出する場合、給与を大幅に上げると有利でしょう。

その「大幅な賃上げ」とは、たとえば以下の例が当てはまります。

給与の年平均成長率が3%以上
給与の年平均成長率が4%以上
給与の年平均成長率が5%以上

たとえば、年収300万円の人が3年間で3%ずつ給与を上げると、最終的には327.9万円になります。

一気に上げる必要はないので、計画的に賃上げを行いましょう。

経済産業省のEBPMに協力する

前述したように、EBPMに協力することは加点項目の一つとなります。

経済産業省が行う調査に参加することで、加点されることがあるのです。

企業が客観的なデータを提供することで、政策をより良くすることが目的です。

ただし、EBPMに協力する場合、もし新事業進出補助金がもらえなくても、情報提供を続ける必要がある点に注意しましょう。

新事業進出補助金がもらえなかったからといって、協力をピタッとやめることはできません。

事業場内最低賃金を引き上げる

最後のポイントとなるのは、事業場内最低賃金を引き上げることです。

特にコロナ回復加速化枠では、最低賃金を地域の最低賃金よりも高く設定すれば有利になるでしょう。

例)
地域別最低賃金より+30円以上
地域別最低賃金より+50円以上

引き上げ額が高いほど加点によってポイントアップするため、可能な範囲で引き上げを検討してくださいね。

ワークライフバランスの取り組みを行う

最初のポイントは、ワークライフバランスを大切にすることです。

ワークライフバランスといえば、現在とても注目されている言葉ですね。

仕事とプライベートの時間をうまく分けることを意味します。企業がワークライフバランスを意識した取り組みをしていると、審査に有利になるでしょう。

このワークライフバランスの例ですが、会社の規模によって次のような事例が当てはまります。

従業員が100人以下)
次世代育成のための計画を公表している。
女性の活躍を応援する計画を公表している。


従業員が100人以上)
次世代育成のための認定を受けている。
女性活躍推進法に基づく認定を受けている。

従業員数によって求められる取り組みが変わってくるため、注意してください。

専門家に相談して事業計画書を作成する

新事業進出補助金の採択率を高める一つの方法が、専門家と協力して事業計画書を作成することです。

事業計画書を作成するにあたって専門家の意見を聞けば、より良い計画を立てることが可能です。

専門家というのは、社労士や中小企業診断士、経営コンサルタントなどです。

自分だけで計画を作るのは難しいこともあるので、専門家の力を借りることをおすすめします。

その際は、料金よりも実績のある専門家を選びましょう。
新事業進出補助金の専門家に頼むと、こんな利点があります。

  • 手間と時間が減る…スムーズに申請が進む
  • 資金相談もできる…融資について助言が受けられる
  • 採択率が上がる…専門家のサポートで採択されやすくなる
  • 期限管理も安心…スケジュール管理も任せられるから、知らないうちに期限が過ぎるようなことはない
  • 事業計画の質がアップする…補助金獲得のアイディアをもらえるため、結果的により良い事業計画書になる

ただし、専門家に依頼する際は以下に気をつけましょう。

  • 丸投げしないこと…事業計画はあくまで自分で考えることが基本
  • 悪質な業者もいる…高額な請求をする業者もいるので、相場や信頼性を確認しておく
  • 料金・サポート内容を確認した上で依頼する…専門家によってサービス内容は異なるため、事前にチェックしておく

ただし、申請にはルールが多いため、専門家と協力してスムーズに進めましょう。

新事業進出補助金をうまく活用し、ぜひ事業成功を目指してください。
参考:中小企業庁(中小企業新事業進出補助金PDF)

新事業進出補助金の採択率が落ちる要因とは

新事業進出補助金の採択率が落ちる可能性のある要因をまとめました。

  • 無関係の会社と共同申請
  • 似たような事業の申請が集中している
  • 採択後に加点項目を達成できなかった
  • 過去に同じような補助金を受けたことがある

無関係の会社と共同申請

新規事業の立ち上げ時に他社と協力することは可能です。しかし、関与するすべての企業が本当に必要な存在でなければなりません。

たとえば、補助金額を増やしたいからと関係の薄い会社を無理に参加させると不適切な連携とみなされ、減点対象になってしまいます。

審査においては、「なぜその企業と協力するのか?」「その企業との協力は本当に必要なのか?」がチェックされます。

事前に各企業の役割や、協力が必要な理由を突っ込まれても大丈夫なようにしておきましょう。

似たような事業の申請が集中している

特定の時期に、同様の事業の申請が増えると採択率に悪影響が出ます。これは状況によるものなので、必ずしも事業者自身の落ち度ではありません。

そもそもなぜ同様の事業が殺到したら、その事業の採択率が下がるかというと、ブームによる過剰投資を防ぐためです。

たとえば、一時期タピオカミルクティーが流行りましたよね。これは一過性の流行であり、今では廃れています。

ブームだった当初は投資する価値があったものの、流行は衰退するスピードも速いため、過剰投資によるダメージが大きいです。

タピオカミルクティーが流行った頃、多くのタピオカ店が補助金に申請してきました。

審査側は、タピオカミルクティーが今爆発的に人気だからといって、安易に集中的な投資はしません。

今爆発的に流行っているビジネスだからこそ、ただの一時的な流行では?と懸念するでしょう。これが、同様の事業が集中すると採択率が下がりやすい理由です。

流行を意識した事業を計画する場合は、市場の持続性を十分に説明できるようにしておきましょう。

採択後に加点項目を達成できなかった

補助金の審査では、加点項目を満たすと採択されやすくなります。

しかし、採択後に加点項目を達成できない場合、次回の申請で減点されるリスクがあるのです。

たとえば、環境負荷を減らす新技術を導入するとして加点を得たにもかかわらず、実際には導入しなかった場合、次の申請時に不利になってしまいます。

さらに、一度未達成と判断されてしまうと、その後18か月間、別の補助金に申請しても減点対象です。

ほかの補助金制度の例としては、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などが挙げられます。

ですから、新事業進出補助金申請時には、本当に実行可能かを十分に考え、無理のない計画を立てましょう。

過去に同じような補助金を受けたことがある

特にグリーン成長枠(GX進出類型)においては過去に同じ種類の補助金を受けた場合、減点対象になる恐れがあります。

ただし、これはまったく同じ事業の場合に限られるのです。

新規性を明確に説明できれば、影響を抑えることができます。

以下の2点を事前に整理しておきましょう。

  • 別事業要件…以前の補助金を受けた事業とは異なる新規事業である
  • 能力評価要件…過去の事業と新事業を両立できる体制・資金力がある

これらのポイントを満たせば、過去の補助金受給歴があっても採択の可能性を高められます。

監修者のワンポイントアドバイス

新事業進出補助金などの補助金申請には加点項目が設定されています。

補助金の採択は相対評価となっていますので加点項目があるのに加点申請しないとかなり不利になってしまいます。

必ず加点項目の確認は行うようにすることをお勧めさせて頂きます。

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