2025年最新!キャリアアップ助成金とは?申請条件等を解説!

キャリアアップ助成金の概要や各コース、申請方法について分かりやすく解説します。
梅沢 博香

更新日:

キャリアアップ助成金とは?申請条件等を解説!

キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用者の正社員化や処遇改善を図る企業に対して助成する制度です。
企業がこれらの労働者のキャリアアップを促進する取り組みを行った場合に助成金が支給されます。
キャリアアップ助成金には、正社員化支援と処遇改善支援の2つの支援があり、それぞれにコースが設けられています。

キャリアアップ助成金を活用できる事業主の条件

次のすべてに該当する事業主がキャリアアップ助成金を活用できます。

  • 雇用保険に加入している事業所
  • 事業所ごとにキャリアアップ管理者を任命している事業主
  • 事業所ごとに従業員のキャリアアップ計画を作成し、労働局から受給資格の認定を受けている
  • 対象となる従業員の労働条件、勤務状況、および賃金の支払い状況などを記録し、賃金の計算方法を明確にしている

参考:キャリアアップ助成金パンフレット
助成金の額については、企業の規模によって異なります。
資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数により判定します。

業種資本金の額または出資の総額常時使用する労働者の数

小売業(飲食店を含む)
5,000万円以下50人以下
サービス業(政令で定めるものを除く)5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

「キャリアアップ助成金」非正規雇用労働者➤正社員

非正規雇用の従業員を正社員として雇用すると、「キャリアアップ助成金」を受け取れる可能性があります。
この助成金には主に以下の2つのコースがあります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース

それぞれの仕組みや支給金額を詳しく見ていきましょう。

1. 正社員化コース

対象となるケース

以下のようなケースで助成金を受け取れます。

  • アルバイト・パートを正社員に転換
  • 派遣社員を直接雇用して正社員に
  • 無期雇用の非正規社員を正社員に転換

正社員の定義

以下の3つすべてを満たす必要があります。

  • 昇給制度がある
  • 賞与または退職金制度がある
  • 同じ事業所内の正社員と同一の就業規則が適用されている

また、転換・直接雇用後の6ヵ月間の賃金が、前の6ヵ月と比べて3%以上増額していることも条件です。
※通勤手当や住宅手当など、一部の手当は「賃金3%増加」の計算に含められません。

支給金額一覧(正社員化コース)

企業区分転換内容生産性向上要件支給金額
中小企業有期 → 正社員満たさない57万円
満たす72万円
無期 → 正社員満たさない28.5万円
満たす36万円
大企業有期 → 正社員満たさない42.75万円
満たす54万円
無期 → 正社員満たさない21.375万円
満たす27万円

※生産性向上要件とは:過去3年間で生産性が1%以上伸びていること。

加算措置制度

一定の条件に該当する場合は、以下のように加算されます。

条件加算額(中小企業・大企業共通)
派遣社員を直接雇用28.5万円(生産性向上要件を満たす場合:36万円)
対象者が一人親家庭の母・父9.5万円(満たす場合:12万円)
人材開発支援助成金の訓練修了後の転換9.5万円(満たす場合:12万円)

特別な加算(新制度創設時)

以下の制度を新たに導入したうえで正社員化した場合、1回限りの加算があります。

対象制度中小企業中小企業(要件満たす)大企業大企業(要件満たす)
職務・勤務地限定社員、短時間正社員9.5万円12万円7.125万円9万円

2. 障害者正社員化コース

対象となる障害者

以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 非正規雇用で6ヵ月以上雇用されている
  • 以下いずれかに該当する
  • 身体障害者、知的障害者(重度含む)
  • 精神障害者・発達障害者
  • 難病患者・高次脳機能障害の診断を受けた者
  • 就労継続支援A型事業の利用者ではない
  • 事業主・役員の3親等以内の親族でない

支給金額一覧(障害者正社員化コース)

※支給は1年にわたり、6ヵ月ごとに2回に分けて行われます。

企業区分対象者転換内容支給金額
中小企業重度・精神有期 → 正社員120万円
重度・精神有期 → 無期60万円
重度・精神無期 → 正社員60万円
上記以外有期 → 正社員90万円
上記以外有期 → 無期45万円
上記以外無期 → 正社員45万円
大企業重度・精神有期 → 正社員90万円
有期 → 無期45万円
無期 → 正社員45万円
上記以外有期 → 正社員67.5万円
有期 → 無期33万円
無期 → 正社員33万円

注意点と申請時のポイント

  • 申請にはさまざまな要件があります。
  • 特に「就業規則」「昇給制度」「賞与制度」「賃金増加率」などの条件は、事前確認が重要です。
  • 対象者の雇用形態や障害区分によって、支給額が大きく異なります。
  • 実際の申請前には、厚生労働省の最新ガイドラインを確認しましょう。

「キャリアアップ助成金」非正規雇用労働者の処遇改善

非正規雇用労働者の賃金や労働条件の改善を行った場合も、「キャリアアップ助成金」の対象となります。
以下の5つのコースで支給が受けられます。

1. 賃金規定等改定コース

2%以上の賃金アップにつながる賃金規定の改定を行うと、助成金の対象に!

支給条件(抜粋)

  • 非正規雇用労働者の昇給率2%以上
  • 年1回・1事業所につき最大100人まで
  • 同年度内での再申請不可

基本の支給金額(1人あたり)

企業区分対象人数生産性向上要件支給額
中小企業1~5人満たさない3万2,000円
中小企業1~5人満たす4万円
中小企業6人以上満たさない2万8,500円
中小企業6人以上満たす3万6,000円
大企業1~5人満たさない2万1,000円
大企業1~5人満たす2万6,250円
大企業6人以上満たさない1万9,000円
大企業6人以上満たす2万4,000円

賃金増加率による加算(中小企業のみ)

増加率生産性向上要件加算額(1人あたり)
3%以上5%未満満たさない1万4,250円
3%以上5%未満満たす1万8,000円
5%以上満たさない2万3,750円
5%以上満たす3万円

職務評価を用いた加算(1事業所あたり)

企業区分生産性向上要件加算額
中小企業満たさない19万円
中小企業満たす24万円
大企業満たさない14万2,500円
大企業満たす18万円

※職務評価手法:単純比較法/分類法/要素比較法/要素別点数法

2. 賃金規定等共通化コース

正社員と共通の職務に応じた賃金規定を非正規雇用労働者に適用した場合に支給。

企業区分生産性向上要件支給額(1事業所あたり)
中小企業満たさない57万円
中小企業満たす72万円
大企業満たさない42万7,500円
大企業満たす54万円

3. 賞与・退職金制度導入コース

非正規雇用労働者向けに賞与や退職金制度を導入し、支給または積立を行うと対象に。

企業区分生産性向上要件支給額(1事業所あたり)
中小企業満たさない38万円
中小企業満たす48万円
大企業満たさない28万5,000円
大企業満たす36万円

同時導入による加算(賞与+退職金)

企業区分生産性向上要件加算額
中小企業満たさない16万円
中小企業満たす19万2,000円
大企業満たさない12万円
大企業満たす14万4,000円

キャリアアップ助成金の申請の流れ

キャリアアップ助成金の活用に当たっては、各コースの実施日の前日までに「キャリアアップ計画」の提出が必要です。
「キャリアアップ計画」の作成等の申請の準備は、労働局・ハローワークと協力しながら進めます。
正社員化支援に関するコースと、処遇改善支援に関するコースで申請の流れが異なるのでご注意ください。

「キャリアアップ計画」とは?

「キャリアアップ計画」とは、企業が社内の人材確保の現状を分析し、有期雇用労働者の意見も取り入れながら、キャリアアップの課題を検討し、その対応方針をまとめた計画のことです。

正社員化支援に関するコースの申請の流れ

  • 労働局・ハローワークからキャリアアップ計画の作成支援・認定を受けて、キャリアアップ計画を作成・提出
  • 正社員への転換規定がない場合は、労働局・ハローワークから就業規則等の改定方法の相談等を受けて就業規則等を改定
  • 就業規則等にもとづく正社員化
  • 正社員化後6か月分の賃金を支払う(正社員化前6か月と比較して3%以上賃金の増額が必要)

≪2か月以内≫

  • 支給申請
  • 労働局・ハローワークが支給審査・支給決定

処遇改善支援に関するコース

  • 労働局・ハローワークからキャリアアップ計画の作成支援・認定を受けて、キャリアアップ計画を作成・提出
  • 労働局・ハローワークから就業規則等の改定方法の相談等を受けて就業規則の改定等の取組を実施
  • 取組後6か月分の賃金を支払う

≪2か月以内≫

  • 支給申請
  • 労働局・ハローワークが支給審査・支給決定

キャリアアップ助成金 申請時の注意点

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正社員にする、処遇を改善した場合に受給できる制度ですが、要件を満たさない場合は支給されません。
制度の特性上、事前準備や手続のタイミングを誤ると申請そのものが無効になるケースもあります。
ここでは、申請時に特に注意すべき以下6つのポイントを整理してご紹介します。

  1. 申請後の要件修正は不可
  2. 審査が厳格化されている
  3. 申請期限は厳格。遅れると失権
  4. 就業規則や労使協定への明記が必須
  5. 助成金の受給までに1年程度かかる
  6. 「キャリアアップ計画」は措置前に必ず提出

1. 申請後の要件修正は不可

キャリアアップ助成金は、「正社員転換」「賃金規定の改定」などの措置を行った後、6ヵ月間の賃金支払い実績を経て申請する形式ですが、その時点で要件を満たしていないと申請は受理されません。
事後修正や訂正は原則できません。

よくあるミス例

  • 対象者の範囲が曖昧である
  • 賃金増額率が基準(例:3%)に満たない
  • 賃金規定や就業規則に明確な記載がない

事前に基準や書類を十分に確認することが重要です。

2. 審査が厳格化されている

近年、不正受給の事例が複数発覚したことから、キャリアアップ助成金の審査は年々厳しくなる傾向にあります。
書類の不備や説明不足がある場合、即時に却下されるケースも見られます。
制度や運用に不安がある場合は、社会保険労務士など専門家に相談することを強く推奨します。

3. 申請期限は厳格。遅れると失権

申請期限は、原則として以下の通り定められています。
期限を過ぎると、いかなる理由があっても申請はできません。

対象申請期限
正社員転換・賃金規定改定など該当措置後、6ヵ月分の賃金を支払った日の翌日から2ヵ月以内
賞与支給初回の支払日の翌日から2ヵ月以内

4. 就業規則や労使協定への明記が必須

助成金の対象となる措置(正社員化や昇給等)は、特定の従業員のみに適用するような個別対応では認められません。
「誰が対象となるか」「どういう基準で対応するか」などを、就業規則や労使協定等に明文化しておく必要があります。
文書上の整備を怠ると、支給対象外とされるリスクがあります。

5. 助成金の受給までに1年程度かかる

助成金の受給までには、以下のようなステップを踏む必要があり、全体でおよそ1年程度の期間がかかります。

おおまかな流れ

  1. キャリアアップ管理者の選任
  2. キャリアアップ計画の作成・提出
  3. 正社員化・賃金改定などの実施
  4. 6ヵ月分の賃金支払い
  5. 支給申請
  6. 審査・支給決定(数ヵ月)

計画的な運用が必要です。

6. 「キャリアアップ計画」は措置前に必ず提出

助成対象となる正社員化や賃金規定改定などの措置を行うには、事前にキャリアアップ計画を労働局に提出することが必須です。
この計画は、労働組合または過半数代表者との協議に基づいて策定する必要があります。
措置後に提出した場合は原則無効となり、最も多い申請ミスのひとつです。

キャリアアップ助成金は非常に有用な制度ですが、「事前の段取り」と「書類の正確性」が成否を分けます。
制度の趣旨や要件を正しく理解した上で、手続の各段階でミスのないよう十分に注意しましょう。
必要に応じて専門家のサポートを受けることも、助成金の活用成功につながります。

キャリアアップ助成金が支給されないケース

キャリアアップ助成金は、一定の要件を満たした場合に受給できる制度ですが、条件を満たしていても特定の事情がある場合は支給されないことがあります。
申請を無駄にしないためにも、以下のような代表的な不支給となるケースを事前に確認しておきましょう。
以下5点が不支給となる主なケースです。

  1. 実地調査への非協力
  2. 不正受給の履歴がある場合
  3. 労働関係法令違反がある場合
  4. 会計検査院の検査に協力しない場合
  5. 書類の不備に適切に対応しなかった場合

1. 実地調査への非協力

審査過程で、労働局による実地調査が予告なしに行われることがあります。
この調査に正当な理由なく協力しない場合(調査の拒否、虚偽の説明、改ざんされた帳簿の提出など)は、不支給の対象となります。

2. 不正受給の履歴がある場合

過去にキャリアアップ助成金等で不正受給が確認された事業主は、原則としてその後5年間は申請ができません。
ただし、不正の内容や改善状況によっては、例外的に制限期間が短縮されることもあります。

不正受給の例

  • 実態と異なる内容での申請
  • 虚偽の書類提出
  • 意図的な事実の隠蔽 など

※事務的ミスなど、意図的でない場合は通常「不正受給」とは判断されませんが、適切な修正が必要です。

3. 労働関係法令違反がある場合

支給申請日の前日から遡って1年以内に、労働基準監督署などから是正勧告等を受け、かつその是正が確認できない場合には助成金が支給されません。

該当する例

  • 残業代の未払い・不適切な計算
  • 違法な労働時間管理
  • 有給休暇の未付与
  • 処遇改善計画の未実施 など

※軽微な違反でも、是正が行われていない場合は対象外になることがあります。事前に就業環境や社内制度の見直しが重要です。

4. 会計検査院の検査に協力しない場合

助成金の支給後、会計検査院による検査が実施されることがあります。
この検査に協力しない場合や、必要書類の保存が不十分であった場合は、支給済の助成金の返還を求められる可能性があります。

保存が必要な主な書類(支給決定日から5年間)

  • 支給申請書
  • 添付書類の写し
  • 計画書 等

5. 書類の不備に適切に対応しなかった場合

申請書類や添付資料に不備や不明点がある場合、労働局から修正・再提出の指示が行われます。
指定された期限内に対応しなかった場合は、申請が却下される可能性があります。

キャリアアップ助成金の申請にあたっては、法令遵守・書類管理・調査対応など、形式的な要件だけでなく運用面の適正性が重視されます。
申請前に社内体制を整備し、各種手続に正確に対応することが支給への近道です。

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