DX化に使える補助金は?中小企業のDX化に使える補助金3選!
DX化とは、デジタル技術を活用してビジネスを変革していくことです。
近年、DXの推進に力を入れる企業も増えてきました。
本コラムでは、中小企業のDX化に使える補助金を紹介します。
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この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
DXとは?
DXとは「デジタル化による社会・ビジネスの変革」という意味です。
経済産業省の「DXリテラシー標準」ではDXを次のように定義しています。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』
引用:経済産業省(DXリテラシー標準)
DX化の事例:アナログだった業務をデジタルに移行
紙と電話に頼る業務スタイルで出社が必須の木材会社。
営業データが残っていない、目標数値やKPIがない、新規開拓営業がほとんどできていない等の課題を抱えていた。
従業員全員にパソコンとiPhoneを配付し、顧客情報や商材を全てデータ化。
それらを個人端末で確認できるようにした。
また、商材にバーコードをつけてデータ化し、商談内容もデータ化し、MA(マーケティングオートメーション)ツールも導入。
取り組みの結果、テレワーク、ペーパーレス化、MAによる新規顧客確保の仕組みを構築できた。
DX化とIT化の違いは?
DX化とIT化は混同されがちですが、この2つの意味は異なります。
IT化は、「アナログで行っていた作業や業務をデジタルに置き換えていく作業のこと」です。
たとえば、紙と電話が中心の業務スタイルからEメールやチャットツールに置き換えることはIT化です。
一方、DX化は「データやデジタル技術を活用し、製品・サービス・ビジネスの在り方・風土等を変革すること」。
DX化の意味合いはIT化より広いイメージです。
「IT化はDX化の手段」とも言えます。
DX化のコスト
DX化を目指す場合の主なコストをまとめました。
- データ管理:データの収集、保管、分析に必要な費用
- 業務プロセスの再構築:既存の業務フローの見直しや改善費用
- 人材育成:従業員のデジタルスキル向上に向けた教育・研修費用
- 外部人材の採用:DX化に必要な専門家や技術者の採用にかかる人件費
- システム投資:新たなソフトウェアの導入や、既存システムの更新費用
- セキュリティ対策:データ管理に伴うセキュリティリスクへの対応費用
- クラウドサービス利用料:ツールなどの利用にかかる、月額・年間利用料
- コンサルティング費用:DX化を踏まえた事業の方向性や経営アドバイスなど、外部専門家へ依頼した場合の報酬
上記を踏まえると、決して1日や2日で全てを行えるようなものではありません。
DX化を目指す際は、長期的な計画を事前に立てた上で実行すべきといえるでしょう。
DX化を目指していくうえで、融資や補助金などの資金調達の計画も立てておくと、よりスムーズなDX化が実現できます。
中小企業がDX化を行うメリットは?
政府が企業のDX化を推進する流れは、大企業はもちろん中小企業にも影響を及ぼしています。
今、DX化を図らないと競争に取り残されてしまう恐れがあります。
- 市場競争力を高められる
- 変化する消費者ニーズに対応できる
- 災害等のイレギュラーでも事業を継続しやすい
- 業務プロセスの自動化によって効率化を実現できる
DX化を行う注意点
DX化を目指す場合、メリットだけではなく注意する点もあります。下記で特に注意したい事項をまとめました。
- DX化に充てる時間が多すぎる
- 役職によって認識やコミュニケーションのズレがある
- 手当たり次第に新しいツールやシステムを導入してしまう
DX化に当てる時間が多すぎる
DX化を進める際には、導入プロセスに過剰な時間を費やしてしまうリスクがあります。
業務プロセスを大きく見直し、デジタルツールやシステムを選定する際に十分な検討は必要です。
しかし計画や実行に過剰な時間をかけすぎると、本来の業務に悪影響を及ぼす可能性があります。
これは、従業員の負担増加やプロジェクトの停滞を引き起こし、結果的にDX化自体が頓挫する要因に。
このような事態を防ぐには、DXプロジェクトにおいて明確なスケジュールを設定し、段階的に実施することが重要です。
たとえば、まず一部の業務や部門で試験的にデジタルツールを導入し、その成果を確認した上で全社的な展開を進めるアプローチが有効です。
また、専門の外部コンサルタントを活用し、適切なツール選定や効率的な導入プロセスを支援してもらうことも検討すべきでしょう。
DX化の成功には、限られたリソースを適切に配分し、事前の計画段階で現実的な目標を設定することが不可欠です。
最終的に、DX化に充てる時間を適切に管理することが、効率的な業務改革と企業の競争力向上につながります。
従業員によって認識のズレがある
DX化を進める際、従業員間でその意義や目的に対する認識が統一されていない場合、プロジェクトが停滞したり、期待した効果が得られないことがあります。
経営層が掲げるDXの目標と現場の従業員が抱くイメージが食い違うと、導入したデジタルツールや新しい業務フローが活用されない事態が起きる可能性があります。
こうした認識のズレを防ぐには、DX化の計画段階から従業員を巻き込み、全体の方向性を共有することが重要です。
具体的には、導入するシステムやツールの選定理由、期待される成果、そして個々の業務にどのような変化が生じるのかを明確に説明します。
また、定期的なミーティングや研修を実施し、従業員が新しいツールを使いこなすための知識やスキルを習得する場を設けることも効果的です。
さらに、従業員がDX化の意義を実感できるよう、小さな成功体験を共有する仕組みを作ることが有効です。
たとえば、特定の業務でDX化がもたらした効率化や成果を社内で発信し、従業員全体のモチベーションを向上させる取り組みが考えられます。
DX化は企業全体の変革を伴うプロセスであり、従業員全員が同じビジョンを持つことがその成功を左右します。
したがって、認識のズレを解消するための適切なコミュニケーションとサポートが欠かせません。
手当たり次第に新しいツールやシステムを導入してしまう
DX化を進める際、新しいツールやシステムを次々と導入することには注意が必要です。
具体的には、導入するツールが企業の具体的な課題に対応していなかったり、既存のシステムとの連携が不十分であったりする場合です。
上記の場合、業務が混乱し、DX化の本来の目的である業務効率化や競争力強化が見込めない場合があります。
また、導入後のメンテナンスや従業員の習熟にかかるコストが増加し、かえって経営資源を圧迫する結果にもなりかねません。
このようなリスクを回避するためには、まず自社の業務プロセスをしっかりと分析し、課題を明確にすることが必要です。
その上で、課題解決に最適なツールやシステムを選定し、導入の優先順位をつけて計画的に進めることが求められます。
経理業務の効率化が課題であれば、まずはその分野に特化したツールを導入し、運用状況を検証した上で他の業務への適用を検討するなどの段階的なアプローチが有効です。
さらに、選定するツールが既存のシステムとスムーズに統合できるかどうか、また将来的な拡張性があるかも重要な判断基準となります。
信頼できるベンダーや専門家のアドバイスを受けることで、適切な選択を行いやすくなります。
DX化の目的は単なるツールの導入ではなく、業務プロセスの改革や価値創出にあります。
そのため、ツール導入の際には戦略的な計画を立て、効果的に活用することが重要です。
これにより、無駄なコストや時間を抑え、DX化を成功に導くことが可能となります。
中小企業のDX化に使える補助金(1)「IT導入補助金」
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者等がITツールを導入する際に活用できる補助金です。
「IT導入補助金」は、申請者がIT導入支援事業者/ベンダーというシステム業者等と協力して申請する必要があります。
補助対象となるITツールは、原則としてIT導入支援事業者/ベンダーが提供し、かつ本事業において登録されたもののみです。
2025年度も、IT導入補助金の実施が確定しています。
詳細はこちらのコラムをご確認ください。
IT導入補助金は2025、スケジュールと年間公募回数、変更点を解説します!
「IT導入補助金」の補助率と補助金額
補助率 | 補助額 |
通常枠:購入費用の1/2以内 インボイス枠:購入費用の1/2~4/5以内 | 30万円~450万円 |
「IT導入補助金」の公式サイト
「IT導入補助金」の補助対象となるツール
革新的製品・サービスの開発、または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等が「ものづくり補助金」の補助対象費用です。
別々のITツールを申請する場合は両方の枠を使えます。
通常枠 | デジタル化基盤導入類枠 |
1つ以上の業務プロセスを保有するITツールの導入 | 会計、受発注、決済の機能をもつITツールの導入 |
「IT導入補助金」を使ったDX化の活用例
従来 | DX導入後 |
【林業】 森林調査は林内を実際に歩いてすべての木を調査。 その後、事務所で調査結果の集計をエクセルで行っていた。 | 3D地理情報システムとドローン導入。 ドローンで空撮し、その結果を点群データ化、解析もITツールで行うようになった。 森林調査人員が約8割減され、調査コスト削減された。 |
中小企業のDX化に使える補助金(2)「事業再構築補助金」
事業再構築補助金は、時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った挑戦を支援する補助金です。
「事業再構築補助金」は、「コロナ禍の影響で売り上げが減少している」ことが申請の条件です。
その他主な条件は次のとおりです。
- 新分野展開、業態転換、事業・業種転換等、指針に示す「事業再構築」を行うこと
- 認定経営革新等支援機関(国の認定を受けた中小企業診断士、金融機関等)と事業計画を策定すること
「事業再構築補助金」は原則として、補助金は後払い(精算払い)です。
補助事業の実施期間中は申請する事業者が全ての経費を立て替える必要があります。
そのため、金融機関からのつなぎ融資をうけるケースもあります。
まず事業者は事業計画書を提出し、事務局はそれにもとづいて採択・不採択を決定します。
採択後は事務局で補助事業の対象経費等の妥当性について確認を行った上で、「交付決定」を行います。
事業者は交付決定後に事業を実施。
事業終了後に事務局は補助金額の「確定検査」を行い、補助事業に要した経費として認められた経費が実際に補助金の対象となります。
事業再構築補助金は2025年も実施が予想されています。
しかし、今回の13回公募で事業再構築補助金は終了し、新たに中小企業新事業進出促進事業という補助金がスタートします。
2025年度の事業再構築補助金についてまとめたので、こちらもご覧ください。
事業再構築補助金は2025年も実施される?後継補助金は?
「事業再構築補助金」の公式サイト
「事業再構築補助金」の補助率と補助金額
補助率 | 補助額 |
2/3(6,000万円超は1/2) ※中堅企業の場合は、1/2(4,000万円を超える部分は1/3) | 100万円~8,000万円(「通常枠」の場合) |
※補助額は従業員数によって変動します。
「事業再構築補助金」の補助対象となるツール
機械装置・システム構築費、技術導入費等の10項目が補助の対象になります。
詳しくは「事業再構築補助金」の公募要領24~27ページでご確認ください。
「事業再構築補助金」の補助対象となる経費は、本事業の対象として明確に区分できるものである必要があります。
対象経費は必要性や金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できるものです。
「事業再構築補助金」を使ったDX化の活用例
従来 | DX導入後 |
【イベント運営会社】 コロナの影響によりイベントの中止が続出。 | コロナの感染リスクを抑えつつイベントを開催するために、ライブや展示会をバーチャル上で再現するサービスの提供を開始した。 |
中小企業のDX化に使える補助金(3)「ものづくり補助金」
「ものづくり補助金」は、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。
この補助金は、DXを進めるうえでの具体的な設備投資やITツールの導入といった費用をサポートします。
これにより、中小企業がデジタル技術を活用して業務効率を向上させる大きな助けになるのです。
ものづくり補助金の特徴は、DX化や業務改善に直接結びつく設備やシステムの導入に対する支援が充実している点です。
たとえば、製造業では生産管理システムの導入、非製造業では顧客管理システムや業務管理ツールなど、幅広い用途でのデジタルツールが補助の対象となり得ます。
また、この補助金は単なる資金提供にとどまらず、事業計画の策定やDX戦略の構築など、企業が長期的に成長するための支援も組み込まれています。
さらに、ものづくり補助金は他の補助金と比べ、比較的多額の補助を受けられる可能性があることも特徴です。
そのため、DXに必要な高額な設備投資やシステム導入を考えている中小企業にとって、資金調達の一環として非常に有効です。
この補助金を利用することで、中小企業がDXに向けた取り組みをより安心して実行できるようになります。
今後のものづくり補助金について詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。
ものづくり補助金は上限4,000万円で2025年度も実施!19次公募はいつスタート?
「ものづくり補助金」の補助率と補助金額
補助率 | 補助額 |
中小1/2、小規模2/3 | 100万円~1,000万円 |
「ものづくり補助金」の補助対象となるツール
革新的製品・サービスの開発、または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等が「ものづくり補助金」の補助対象費用です。
「ものづくり補助金」を使ったDX化の活用例
従来 | DX導入後 |
【農業】 販売する果実を新鮮なまま遠方でも販売したい。 | 地域特産品の果実を密閉冷凍するための「急速冷凍機」を導入。 生とほぼ同じ品質・鮮度を保ったまま長期保存が可能になり、全国・海外に販路を拡大することができた。 |
「ものづくり補助金」公式サイト
補助金活用時のポイント

DX関連の補助金に限らず、補助金活用時のポイントを3つ解説します。
- 補助金の受給は後払い
- 補助金の条件を確認する
- 採択されないと補助金が受けらない
補助金の受給は後払い
補助金を利用する際に特に注意すべき点の一つは、補助金の受給は後払いであることです。
補助金は多くの場合、事業者がまずは対象となる経費を立て替え、その後、条件に合致したことが確認されてから補助金が支払われます。
これは、中小企業にとってキャッシュフローに影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
高額なシステム導入費用を補助金で賄う場合、事前に必要な資金を確保しておかないと、事業運営に支障が出るリスクがあります。
また、補助金が支払われるまでには申請手続きや審査に一定の期間が必要です。
そのため、事前に資金繰りをしっかりと計画し、補助金が支給されるタイミングも考慮に入れておくことが重要です。
受給が後払いであることを前提に、計画的にキャッシュフローを管理し、補助金が手元に入るまでの期間も無理なく乗り切る体制を整えることがポイントです。
補助金の条件を確認する
補助金の受給を確実にするには、各補助金の条件をしっかりと確認することが不可欠です。
補助金には通常、申請者や対象となる事業に対して様々な条件が設けられており、これを満たさないと受給ができない場合があります。
たとえば、事業内容や企業規模によって対象外とされるケースがあるため、自社が条件を満たしているかを慎重に確認する必要があります。
さらに、補助金の条件は年度やプログラムによって変更されることもあります。
最新の情報を常に把握し、申請前には公式な情報源で確認することが重要です。
また、補助対象となる経費も細かく定められており、認められていない経費を含めると、後から申請が却下されるリスクもあるため、注意が必要です。
条件の確認を徹底することで、申請手続きがスムーズに進み、補助金を確実に活用できるようになります。
採択されないと補助金が受けらない
補助金は申請すれば必ず受けられるわけではなく、審査の結果、採択されなければ補助金が支給されません。
特に、人気のある補助金は応募が殺到し、厳しい競争を経て採択される企業が決まります。
このため、申請内容の準備にはしっかりとした戦略が必要です。
具体的には、申請書において事業の重要性やDX化が事業成長に与える効果を的確に示し、審査員に対して自社が補助対象にふさわしいことを訴える必要があります。
また、採択されるためには、過去の採択事例を参考にし、審査で重視されるポイントを押さえた申請書作成が有効です。
多くの補助金制度では、採択率や評価基準が公開されています。
これらの情報をもとに、効果的な申請書を作成することで採択率を上げることが可能です。
補助金の採択は厳しいですが、的確な情報を盛り込んだ準備で可能性を高められます。
補助金の申請には事業計画書が必要です
計画書には「技術面」、「事業化面」、「政策面」等の審査項目があり、これら全てを意識しながら作成しなければなりません。
「自分で計画書を作るのはハードルが高い……」という方は、補助金申請のプロに依頼してみませんか?
興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください!