ものづくり補助金って何?
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新しい製品開発や業務プロセスの改善を行う際に、必要な設備投資やシステム導入費用を支援する補助金制度です。
特に、生産性向上や市場競争力の強化を目的とした技術革新やデジタル化の推進に適用されます。
参考:ものづくり補助金公募要領PDF
ものづくり補助金を活用すれば、システム開発を支援してもらえます。 ここでは、申請方法から成功事例まで、補助金を上手に活用するためのポイントを解説します。
カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新しい製品開発や業務プロセスの改善を行う際に、必要な設備投資やシステム導入費用を支援する補助金制度です。
特に、生産性向上や市場競争力の強化を目的とした技術革新やデジタル化の推進に適用されます。
参考:ものづくり補助金公募要領PDF
制度の目的は、中小企業が直面する制度変更に対応し、革新的なサービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援することです。
などを対象とし、これらが直面する問題に対応することが狙いです。
具体的には、下記の業務の支援を想定しています。
ものづくり補助金は、2013年に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」として始まりました。
その後、名称や内容が見直されながら、毎年募集されています。
現在、ものづくり補助金は中小企業や小規模事業者を対象としていますが、以前は大企業の試作品開発や大学の研究開発が主な対象でした。
現在の対象は、日本の企業の約99%を占める中小企業です。
ものづくり補助金は、景気を活性化するための重要な仕組みといえるでしょう。
申請には「事業計画書」などの書類が必要で、審査を通過して採択されなければなりません。
書類作成の手間を減らしたい、または採択される可能性を高めたい場合には、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
補助金申請に関するご相談はこちら
現在、ものづくり補助金には2つの枠があり、それぞれ異なる支援内容なので、確認しておきましょう。
製品・サービス高付加価値化枠
製品・サービス高付加価値化枠は、革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する枠
グローバル枠
グローバル枠は、海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等の取組を支援する枠
うれしいことに、ものづくり補助金の採択率は高いです。
ものづくり補助金制度には年数回の申請期間があり、審査を通過した企業には補助金が交付されます。
2023年6月の第14次公募では、審査通過率は約50.8%と高めでした。過去の公募でも50%以上の通過率が維持されているのです。
ものづくり補助金は、事業者であれば誰でも活用できるわけではありません。
ここでは、ものづくり補助金の公募要領に基づき、どのような事業者が補助金を受けられるのかを解説します。
【ものづくり補助金の対象事業者は誰?】
前述したように、ものづくり補助金は中小企業や個人事業主が、革新的なサービス開発や試作品の開発、生産プロセスの改善に取り組むための設備投資を支援する制度です。
製造業に従事する中小企業の場合、条件は下記の通りです。
業種ごとに資本金や従業員数の制限があるので、詳細については、最新のものづくり補助金の概要を参照しておきましょう。
参考:令和6年度補正予算案「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要
【対象外となる事業者】
たとえ資本金や従業員数の要件を満たしていても、次のような事業者は補助金の対象外です。
ものづくり補助金の対象となるのは、原則として中小企業等経営強化法第2条1項および5項に該当する事業者や組合、個人事業主の一部、特定非営利活動法人の一部です。
こうした縛りがあるため、医療法人、公益および一般財団法人、公益および一般社団法人、社会福祉法人、法人格のない任意団体などは、申請の対象外です。
参考:ものづくり補助金公募要領PDF
新しいシステム導入・改善に、ものづくり補助金を活用することも可能です。
システム開発でものづくり補助金を活用する場合、基本的に下記のいずれかに該当する事業計画が必要です。
小規模事業者や再生事業者などには、補助率が2/3に引き上げられる特例があります。
単なるデジタル製品の導入やデータの電子化だけでは、補助金を受けることはできません。
特に、業務フローの見直しを伴わない事業計画では採択されない可能性が高いでしょう。
システム開発にかかる費用は規模によって変動しますが、一般的な相場は以下の通りです。
自社のシステムがどの規模に該当するか不明な場合、開発シミュレーションを活用し、概算費用を把握すると良いでしょう。
とはいえ、見積もりと実際の費用には差が生じる可能性があるため、注意が必要です。
ものづくり補助金は、補助金交付が事業実施後になるため、先に自社で立て替える必要があります。
公募要領をしっかり確認し、経費計画を立ててくださいね。
システム開発に関する事業で、ものづくり補助金を使って成功した例がいくつかあります。
16次公募の結果、「システム」というキーワードが含まれた事業計画が採択されたのは、2738名のうち270名でした。
これらの事業者は、システム開発やシステム導入を含む計画を立てて、補助金を受けることができました。
その中で、採択された会社と事業計画名をいくつかご紹介します。
商号名・名称 | 都道府県名 | 事業計画名 |
株式会社クリーンアップ | 北海道 | 生産性向上、業務拡大を実現する管内調査用TVカメラシステム導入 |
株式会社システムデザイン | 宮城県 | AIを活用した次世代型生産管理システムの開発 |
株式会社システムプロ | 東京都 | ビッグデータ活用によるマーケティング支援システムの開発 |
株式会社システムイノベーション | 石川県 | クラウド型顧客管理システム導入による営業効率化 |
株式会社システムワークス | 大阪府 | IoT技術を活用したエネルギー管理システムの構築 |
ものづくり補助金を利用することは、事業者にとってどのようなメリットが期待できるでしょうか。
ものづくり補助金では、最大4,000万円まで補助を受けられます。(最大3,000万円のグローバル枠を申請後、大幅な賃上げに取り組む場合に金額が上乗せされる)
補助率に関しては、実質的に中小企業であれば1/2、小規模事業者や再生事業者であれば2/3が補助されます。
ただ、補助金は雑収入として課税されるため、法人税の対象となる点に注意が必要です。また、後払い方式で支給されるため、事前に全額支払わなければなりません。
このことから過度に依存するのは避けたほうがいいですが、他の支援制度と比べると非常に魅力的な制度です。
補助金は融資とは異なり、返済義務がありません。これが大きな魅力といえるでしょう。
言い換えるなら、最大で4,000万円の返済不要な補助を受けられるのです。
中小企業や小規模事業者であればほとんどの企業が対象となり、業種を問わず受けられるため、幅広い企業にとって利用価値があります。
設備投資を検討しているものの、リスクを避けるためにためらっている事業者もいるでしょう。
そんな時、ものづくり補助金を活用すれば積極的に設備導入を進められます。
また、ものづくり補助金の申請には事業計画書の提出が求められます。
この過程で、自社が大切にしていることや解決すべき課題を深く考え、設備投資がもたらす成果を明確にできるでしょう。
補助金申請を通じて自社の将来像を固め、本当に必要な設備投資を実現できるのはメリットです。
採択されない場合もありますが、その過程で自社の課題を再認識し、将来の計画を具体的に描けるので、無駄にはなりません。
ものづくり補助金を申請する際、どんな事業者であっても提出する必要がある書類があります。
申請が締切に間に合わないことがないよう、必要書類を事前に確認しましょう。
【必要書類】
法人は決算書(貸借対照表、損益計算書など)、個人事業主は確定申告書を提出します。
開業1年未満の事業者は事業計画書と収支予算書を提出します。
事業計画書は特に重要です。
補助事業の内容を記載する重要な書類で、記載内容が審査結果に影響するでしょう。
事業計画書には、下記の内容を詳細に記載し、審査項目に沿った説明を記載しなければなりません。
法人は「法人事業概況説明書」、個人事業主は「所得税青色申告決算書」または「所得税白色申告収支内訳書」の写しが必要です。
付加価値額や給与支給総額の算出根拠を示す書類です。
数値の内訳や経営状況の分析を含めて具体的に記載しましょう。
補助対象経費を正しく使用することを誓約する書類です。補助事業計画書に記載した内容以外で使用しないことを誓約します。
また、金融機関から借入れを行う場合や加点を申請する場合などは、事業者の条件に応じた追加書類が必要となる場合がありますので、よく確認しましょう。
ものづくり補助金の申請から受給までの流れや方法を把握しておきましょう。
まず、申請書類を作成します。自社の事業が補助金にふさわしいことを明確に示しましょう。
事前に公募要領をよく読み込み、過去の採択事例なども参考にしてください。
当然ですが、申請書類が完成したら、公募期間内に申請を行います。
ものづくり補助金は常時申請可能ではなく、指定された公募期間に申請しなければなりません。
次回の申請受付期間が明記されているため、申請締切に遅れないように準備を進めましょう。
公募終了後、採択の結果が通知されます。採択された場合、ものづくり補助金の公式サイトに事業者名や事業内容が公表されます。
採択後、すぐに補助金が交付されるわけではありません。まずは補助対象となる事業を実施する必要があります。
事業に必要な資金は、銀行融資など他の方法で調達可能です。
事業実施後、補助金事務局に実績報告を行いましょう。
この際、下記の必要書類を整え、提出します。
申請サポートを依頼している場合、そのサポート内容についても事前に確認しておきましょう。
実績報告に問題がなければ、補助金が交付されます。
ものづくり補助金の申請をしたからといって、必ずしも受けられるとは限りません。成功率を高めるためにも、以下のポイントを守りましょう。
補助金の趣旨に沿った申請をすることが採択への近道です。
中小企業が生産性向上を目指すための設備投資や革新的なサービス開発などが支援の対象です。
書類の不備が原因で不採択になることもあります。
公募要領をしっかり読み込み、必要書類を漏れなく添付してください。
事業計画が実現可能であることを示すことが重要です。
事業計画書では下記の項目を明確にし、収支計画を根拠のある数値で示しましょう。
審査にはポイントがあります。そのポイントを理解し、クリアしているほど採択率は上がるでしょう。
審査員が重視するポイントを踏まえ、申請書類を作成してください。
審査ポイントとは、申請書類を評価する際に特に重視される項目です。具体的には以下のようなものがあります。
例)
事業計画の実現可能性を高める
目標達成に向けた具体的な課題解決法と、社内体制の整備が明確であること。
革新性と技術力
新技術の導入や、既存技術の改善など、革新的な取り組みがあるかどうか。
生産性向上への貢献
設備投資などがどのように生産性を向上させるか具体的に示すこと。
審査ポイントに合った内容で書類を作成すれば、採択は夢ではありません。
公募要領に掲載されている加点項目(例:創業後5年以内、経営革新計画の承認)を活用すれば、採択される可能性が高まるでしょう。
加算項目とは、審査時に加点が付く要素です。加点項目を満たすほど、採択の可能性が高まります。
例)
創業後5年以内
事業が創業後5年以内である場合、加点されるでしょう。
経営革新計画の承認取得
有効な経営革新計画が承認されている場合、加点されます。
加点項目に該当する場合は、必ず申請書類に盛り込んでくださいね。
自社の強みを活かし、弱みをいかに克服するか、戦略を盛り込んだ事業計画を作成しましょう。
ものづくり補助金は本年度より新たな申請枠に編成されました。
本記事にありますようにシステム開発やシステム導入にものづくり補助金を上手に活用されていらっしゃる事業者の方は多くいらっしゃいます。
是非ものづくり補助金の活用を検討してみましょう。